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ポップカルチャーのブログ

新書「カフェと日本人」で知った大正・昭和の「カフェー」とAKB48の類似点。/「ブルーボトルコーヒー」に行って来た。/ 最強のカフェ「北山珈琲店」

大正・昭和の「カフェー」とAKB48の類似点

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どうもこんばんは。小原道由です。
先日「カフェと日本人」という本を読んだ。
日本初の喫茶店〜いま話題のサードウェーブまで日本におけるカフェの変遷をまとめた本。そもそも手に取ったのは自分がコーヒー好きなのもあるけど、帯に”大正・昭和の「カフェー」とAKB48の類似点”というキャッチを見つけたから。凄く気になるじゃないか。
んで、読んでみたら想像以上だった…。


本書で紹介されてる大正13年・銀座にオープンした「カフェー・タイガー」という店が、あまりにもAKBに類似したことをやってて驚いた。
もともと「カフェー・ライオン」という店が若い女性給仕の接客で男性に人気を集めていて、「カフェー・タイガー」はその筋向かいにできた後発店。ライオンとトラを名乗るカフェが向かいで競ってたのが面白い。


ライオンが正統派の接客だったのに対してタイガーは何でもアリ。芸者風、女学生風、奥様風と様々なタイプの女の子を揃えて、赤組・紫組・青組の3グループに分けてビールの売上高を競わせるという”チーム制”を採用。
それだけじゃない。ビール1瓶ごとに付く投票権で、なんと女の子の人気投票まで行っていた。まさかの総選挙!


そして、あの作家・菊池寛が赤組のお君という女の子にガチ恋したらしく、人気投票の際に150票(=ビール150本)を投じて人気ナンバーワンにしたという記録まで残ってる…。現代なら間違いなく”菊池砲”と呼ばれる事態である。
この人気投票が行われたのは昭和4年春。計算したら菊池寛41歳の時だった。ちなみに彼以外にも様々な文化人が店に通ってて、それを皮肉った当時の雑誌記事も確認されている。昔も「金払って女の子に投票とか何やってんだ」というツッコミはあった模様。
そう、いつの時代も男は変わらないのであります…。
※「カフェー・タイガー」についてはこちらの記事も参考になる。


本書では他にも高度成長期に登場した”美人喫茶”(その名の通り、美人ウェイトレスを揃えた店)なんかも紹介されてる。
言うまでもなく”カフェ”はそもそも外来文化なんだけど、ひとたび日本に入ってくると”恐るべき独自進化”を遂げるっていうのは昔からなんだなぁと思った。


冒頭で書いたように本書はあくまでカフェの変遷をまとめた本なので、ちゃんとした(?)店の歴史もじっくり書いてある。むしろ、そっちが中心。「なぜ名古屋人は喫茶好きなのか?」と題してまるまる1章を割いてたり、「カフェ好きが集まる聖地」という章では各地で人気の個人店が紹介されてるので、コーヒー&カフェが好きな人なら面白く読めると思います。


ブルーボトルコーヒー」に行って来た

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”サードウェーブコーヒー”の黒船来航。”コーヒー界のアップル”とか謳い文句がインフレ気味なのが気になる「ブルーボトルコーヒー」@清澄白河に行って来た。


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最寄り駅は清澄白河になってるけど、門前仲町からも徒歩10分くらいで行ける。



オープン当初よりは落ち着いてきてるという話を聞いてたけど、やはり並ぶのは覚悟しないといけない。
一応、並ぶ場所には野外用のストーブがあって、気休め程度だけど寒さ対策がしてある。
結局、50分ほど待って店内へ。


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店内の様子。
コーヒーが出来上がると客の名前を呼ぶ形式。僕は今現在、警察から指名手配を受けてるので、やむを得ず偽名を伝えた。
いろんな所で言い尽くされてるように一杯一杯ハンドドリップで提供するのがブルーボトルの特徴。
何を注文しようか迷った挙句、ストレートにシングルオリジンを注文。確かエチオピア産だと説明された。



ツイートにあるように店内は半分が倉庫&焙煎所でまるで工場。長居できないので、ドヤ顔でMacBook Airを広げてるような人=通称DMBA(管理人が勝手に命名)は皆無。数少ない席はカップルやリア充っぽいグループ客で埋まってる感じだったのと、私服警察官らしき人を見たので持ち帰りにして退散。


コーヒーの味についてはツイートの通り。酸味がかなり強いので(もしかしてハンドドリップの技術の問題?)、ぶっちゃけこれは好き嫌いが分かれるところだと思う。僕はかなり気に入った。
でも、話題に釣られて「スタバやドトールより美味しいコーヒーなんでしょ?」っていうボンヤリしたイメージで行くと肩透かしを食らう人もいると思う。つーか、そもそもスタバやドトールとはベクトルが違うからあまり比較にならない(とんこつラーメンと醤油ラーメンを比べても意味がないのと同じ)。


日本の純喫茶の手法をモダンにアップデートしたブルーボトルは「伝統を現代に」を掲げる立川流落語みたいで面白い。「要はマーケティングでしょ?」っていう声もあるけど、実際に行ってみた感想としてはそこまでシニカルにはなれない。カフェを拡張・再設計してくれそうな期待感はあったし、僕自身はもう何回か行ってみたいと思ってる。次はラテ系を飲みたい。

最強のカフェ「北山珈琲店

カフェ巡りは全然できてないんだけど、これまで行って最強だと思ってるのは鶯谷にある「北山珈琲店」。

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まず、店の外に

「当店は喫茶店(多目的店)ではございません。コーヒーを飲むためだけの店です」
「待ち合わせ、商談、読書、事ム処理、ケイタイなど珈琲を飲む為以外でのご利用は固くおことわり致します☆ご来店後、30分程でお開きにさせて頂いております。」

という地獄のような張り紙が貼ってある。
そして、価格はコーヒー1杯で最低でも1,000円程度はする(最も高いのは2,000円以上)


この店について詳しく書くと長くなるので気になる人はリンク先の食べログもしくはデイリーポータルZの記事をご参照ください。決して店主が恐いとか威圧感がある店ではない。ただ、店のリズムや空気を読めない人は厳しいと思う(例えば「おすすめは何ですかー?」とかすぐ聞いちゃう人は向いてない)。
僕は過去2回行ってるけど、初めて飲んだ時はあまりの美味しさに「うおーー!」と叫びそうになった。
そんなに他のコーヒーと違うの?と言われたら、全然違う!と答える。唯一無二。圧倒的。超絶。神。宗教。カルマ。最終解脱。


「日本の喫茶店を参考にしたブルーボトルコーヒーがこれから日本の喫茶店を潰していく」みたいなツイートを先日見たけど、今起きてることはそんな単純な図式ではない。
北山珈琲店などの昭和喫茶勢、ブルーボトルなど「俺たちの時代」を掲げるサードウェーブ勢、スタバやタリーズなどのセカンドウェーブ勢、近年東京進出が著しいコメダ珈琲支留比亜珈琲などの名古屋勢。
とにかくコーヒー界の戦いは混沌としてきてるのだ。
そう、まるでかつての正規軍、維震軍、レイジングスタッフ、WARが入り乱れた新日マット界のように(明らかに余計な説明)。


という訳で、今コーヒーが面白い。

おまけ

最近、読んだグルメ系の本だと「居酒屋を極める」も面白かった。
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「カフェと日本人」と併せて読みたい。どちらの本も震災によって立ち上がってきたカフェと居酒屋それぞれの在り方について言及がある。カフェも居酒屋も”生活”に強く密着した存在だからこそ、無機質なチェーン店ではない馴染みの個人店を作って大事にしていきたいと思った。