Ivy Ivy Ivy

ポップカルチャーのブログ

The 60 best albums of 2012+1(後編)

どうもこんばんは。元グレートチキンパワーズQJです。
ヤバい!もう4月だ…。
という訳で、早速ですが、30位からどうぞ!


【No.30】

Glad All Over

Glad All Over

Amazon
前作から7年ぶり…。こうやって振り返ると、2012年は再始動が多かったなぁと。
一応、若い読者の為に説明しておくと、Voのジェイコブ・ディランのお父様はボブ・ディランボブ・ディランも知らねって言われたら、もうお手上げだけど、とりあえず話を続けます。


生きる伝説を父親に持ちながら、それでも音楽の道を選択したジェイコブは相当な覚悟があったはず。
まぁ、アイツらしいなと思う。頑固で一度決めたら曲げないんだよね。あんま意固地になるなよ!って思うけど、それをアイツに言っても聞かないだろうなぁ(※まるで友人のように書いてますが、管理人はもちろんジェイコブと一切面識はありません。120%妄想です)。


7年ぶりの新作は、ジェイコブらしいアーシーで土臭い”歌ごころ”はそのまま、アレンジをモダンにアップデートしたアルバムとなった。
日本よ、これがアメリカン・ロックだ!
しかし、これ売れたんだろうか?(調べても分からなかった)これでまたクビになったら、もうファンの僕もやってられないので、まだ聴いてない日本の皆さん、是非聴きましょう。





【No.29】
[asin:B006JSY0G2:detail]
前作のキラキラポップパンクから一転、スケールの大きな大文字のロックへとシフトチェンジしたのが本作。
これまで多くのポップパンクバンドが3枚目ぐらいのアルバムで、この手のシフトチェンジを図ってことごとく失敗→サーセンでした!とばりに次のアルバムで元の音楽性に慌てて戻すっていうのを見てきたので(NFGとかGood CharlotteとかSimple Planとか。Sugarcultに至っては帰ってこれない状況…)、その意味で今作はちゃんと成功させた稀有な例となった。お見事!


とは言え、前作よりセールス的には振るわなかったようなので、やっぱ難しいなぁと思う。この完成度をもってしても変化を嫌うリスナーもいる。
でも、そのジレンマも含めてこれはリアルなパンクアルバムだと思う。





【No.28】

FLOWER

FLOWER

Amazon
これはミニアルバムという位置付けみたいで、本来なら選考の対象外なんだけど、無理やりねじ込んだ。
ご存知のようにこの後バンドは活動休止を発表。恐らくこれがラストアルバム。
これが最後なんて納得いかない!バカヤロウ!こっから始まるんだよ!とメンバーの目の前で怒鳴り散らしたいくらい(ただの迷惑)。


「べつに話は無いけど、戦争が終わったことを教えて欲しい」と歌うM1から、彼ら独特の厭世観のある歌詞とサイケな音像が、過去最高の完成度で鳴っている。
インタビューで「愛なんて金で買えるでしょ」とうそぶくVoの下津は恐らく人生に過度な期待をしてない。してないけど、いや、してないからこそ絶対に譲れないプリミティブな部分へと踏み込んでいく。それを感じたのがM8”セシウム”というタイトルからして問題作な曲。言うまでもなく、3.11以降の状況が歌われている。


「息一つする度にセシウム溜めて生きるだけさ」というフレーズが繰り返される厭世観の中に、「だがこれだけは断っておくぞ 俺の我が子を傷つけるやつは、神様、右翼、ヤクザ、ジャンキーだろうが、俺はそいつを余裕綽々で殺すよ」という歌詞が出てきてドキリとさせられる。
下津はインタビューで他のバンドが愛や寂しさに訴えることに違和感を唱えて、「もっと素直になれ」と言っていた。
表現とは人の根源的な部分へと踏み込まないと本当の意味で響かないし、何よりも3.11で否が応でもそこを日本人全員が揺さぶられた。


しかし、想像を絶する震災の前に多くのミュージシャンが音楽を鳴らすことに謙虚になってしまったと思う。音楽よりも直接被災地に入ってボランティアをすることに意味を見出したミュージシャンもいた。それはそれで何も間違ってない。なんせ僕自身も震災直後は全く音楽を聴く気になれなかった。
でも、一方でそれでも音楽で震災に応答しようと試みたミュージシャンもいる。


例えば、般若は震災1か月後にいち早く動いた1人だ。余震と放射能で不安に包まれた東京で「何もできない」という無力感と、それでも復興への希望を信じるしか無い混乱したリアリティを般若は歌った。
確かに音楽は震災に対して無力かもしれないけど、その無力を表現することには何らかの意味があるのではないか?
般若や踊ってばかりの国が震災に応答して表現したのは、安易な希望や救いではなく、端的に言えば「それでも人生は続いていく」というシリアスな”現実”についてである。


震災によって、それまでの平穏な日常が揺らぎ、関東に住んでいる僕ですらしばらくは絶え間ない余震と放射能への不安(しかも、いつ終わるのかも分からない)を現実として受け入れるのは難しかった。西日本に逃げたかったというのが正直な気持ち。
そんな時に般若が混乱をそのまま歌ったことは、少なくとも僕には現実に向き合う後押しになった。
ポップミュージックとは本来、現実から自由に飛躍できる想像力の表現だ。
だからこそ3分間だけ「今ここではないどこか」へとリスナーを連れて行くことができる。
意地悪く見れば、現実逃避の側面も否めないが、その”3分間の逃避”で何度も救われてきた人間が今この文章を書いてる。


しかし、震災を前に誠実であろうとするほどポップミュージックは、現実から飛躍することができず(無根拠な希望や光”だけ”を歌えば、たちまち陳腐化してしまう)、「今ここで起きている現実」を直視した表現をするしかなくなった。
AKBですら、”風は吹いている”で、復興への希望を歌いながらも、曲調はシリアスで暗く、歌詞の最後は「できることを始めようか?」という地に足の着いた現実的な結論しか歌えなかった。
ところが、現実から飛躍できなくなったポップミュージックは、受け入れ難い現実への逆照射となり、従来と反転した「今ここ」に接続する為の表現として機能した。


だから、ミュージシャンはこれからも震災について臆せずに歌って欲しい。
音楽で放射能は消えないし、音楽で瓦礫も無くならない。
でも、フランスのストリート・アーティストJRが言ったように「アートは物事を直接変えることはできないけど、ものの見方を変えることはできる」。
そう、確かに音楽は無力だが、少なくとも無意味ではない。


踊ってばかりの国のアルバム紹介のはずが、「震災とポップミュージック論」になってしまった…。
これは関東に住んでて、あくまで”直接の被災をしていない”人間が書いた文章なので、もし東北に住んでいたら、同じ結論になったか?は分からない。
あと、震災によって「ここではないどこか」→「今ここ」って話は宇野常寛の「リトルピープルの時代」で拡張現実の時代として取り上げられてるんだよね?
実はこの本、僕は出てすぐ買ったけど、まだ読んでなくて…。近い内にちゃんと読みます。











JRのTED講演。ポップカルチャーに殺られちまってる全ての人に観て欲しい動画。



[asin:4344020243:detail]



余談だけど、震災に向き合ったポップカルチャーという点で、昨年読んだ樋口毅宏の「二十五の瞳」も凄く良かった。全く話題にならなかったような気もするけど、山崎洋一郎は絶賛してた。何だかんだであの人はやっぱり信用できる。
[asin:416381440X:detail]



【No.27】
[asin:B0090S48CO:detail]
ケンタッキー州出身の新人バンド。女の子ヴォーカルによるラモーンズっぽいゴキゲン(死語)なパワーポップチューンが満載。
個人的にはDamoneを思い出して胸熱になる瞬間もあった。何かシーンに影響を与えたり、NMEやピッチフォークが騒ぐバンドじゃないけど、良質なポップソングを鳴らしてる人たちは今後もどんどんフックアップしていきたい所存であります!




モータウンビートなイントロから胸キュン!



【資料映像】

VoのNoelleは現在新バンドThe Organ Beatsで活躍中。



【No.26】
[asin:B0086UXYZO:detail]
歳を取ると「AKBの女の子たちが全部同じに見える」ように、僕もあと5年ぐらいしたらThe VaccinesとHowlerと区別がつかなくなる自信がある。
最後はStrokesとも区別が付かなくなって、「今度のストロークシーンズのアルバムは良いよね!」とか言い出すと思う。
そうやって、人は老いていくのです。あれ?何の話だっけ?
とりあえず、このヴァクシーンズとかいうバンド。最高にクールなロックンロールが聴けますぞ!(紹介が下手すぎ)





【No.25】
[asin:B005T37ZP6:detail]
上半期ベストで紹介済み。
やっぱ「オアシス」という中心を欠いた消失感みたいのが、UKの人たちにもあるんじゃないかと。だから、Viva Brotherもそうだけど、この手の火事場泥棒みたいなバンドが出てくるんじゃないかと。
ポップミュージックの世界っていうのは、椅子取りゲームなんだなと改めて思ったりもする。オアシスが再結成したら、椅子ごとふっ飛ばされるリスクもあるだろうけど、ここまで直系の音を鳴らせるのも才能だと思うので、このまま頑張って欲しい。





【No.24】

100%

100%

Amazon
上半期ベストで紹介済み。
もう一度言うけど、こんな素晴らしい音楽が一部の熱心なファンだけにしか聴かれてないのはもったいなさすぎる!
↓の1曲だけで、ジンジャーが天才なのは分かるはず。




圧倒的なポップセンスと圧倒的に変態な曲展開。



【No.23】

「極私的アイドルポップ総括」でも書いたように、自分がアイドルポップを聴き始めた時のモーニング娘。は、いわゆる”プラチナ期”で、あの重い・暗い・シリアスな雰囲気が個人的に全くダメだった(でも、高橋愛が好きという倒錯状態)。


ところが、この2年くらいでベテラン勢が次々と卒業しつつ、9期・10期を積極投入。大胆に血を入れ替えた娘。は新しいグループのように生まれ変わった。
音楽的にもM8”恋愛ハンター”でダブステップを取り入れ始めてから、M1”One・Two・Three”以降の今日までのシングルはダブステップ・EDM路線の音圧ゴリゴリの攻撃的なビートで攻めまくってる。
さらに、変態的なフォーメーションを繰り返すダンスも圧巻で、K-POP的な”完成度”の高さを目指す方向に振り切ってるのが興味深い。


まるでAKBに対して、「お前ら歌えんのか?踊れんのか?コラ!武道館で勝負するか?何なら、今ここでやっても良いぞ、オラ!」と見せつけるかのようだ(管理人の幻聴です)。
このアルバムは、そんな娘。が逆襲への狼煙を上げた1枚。本当に楽しみなのはこの次のアルバムだ!




現在は娘。ヲタと化したユースケ・サンタマリアがハマるきっかけとなったのがこの曲。



【No.22】
[asin:B008CNG52O:detail]
ブラックミュージックにもアンテナ張ってるんだぜ!ってアピールの為だけにランクインさせました…。虚勢のランクイン!
海外の年間ベストでは軒並み1位を取りまくった2012年を代表するアルバム。


トラックが異様に内省的でアンビエントな感じなのはJames Blakeと共振してるかのようだし、自分がゲイであることをカミングアウトしてるのも含めてブラックミュージックとしては規格外の存在。
ただ、洋楽を聴かない人はその辺の文脈が良く分からないだろうし、そもそも分かるつもりもないだろうし、アボガドじゃねーし、アボガドだし!
とりあえず、ヒップホップとホモフォビアについてはこちらを参照。





【No.21】
[asin:B009B1UZ7C:detail]
UK期待の新人で若干18歳!「ノエル・ギャラガーストーン・ローゼズが認めた」というキャッチフレーズは逆に危なっかしいと思ってたけど、M1を聴いて一発で殺られた。
アコギ1本でロックする音もラーズみたいでカッコ良いし、ポップであることを恐れないキャッチーなフックも良い。
でも、それ以上に歌詞が素晴らしい!(こちらで和訳が読めます)。


まず、歌詞の主人公(=ジェイクくん)は母子家庭で、家に帰ると母親が彼氏と言い争いをしてるような厳しい環境がリアルに描かれてる。
これが日本の歌謡曲だったら、そういった部分はオミットされて「育ててくれた母への感謝!」みたいな安い歌詞で埋め尽くされることが容易に想像できるけど、ジェイクくんはファンモンみたいなしょーもない善意の押し売りみたいな歌詞ばかり歌う激安野郎とは違うのである。
ああいう連中は戸塚ヨットスクールにぶち込んでおけば良い。


ジェイクくんは、そんな環境にTwo Fingersを立てて決別し(イギリス式のFuck you)、「俺はもう前に進んでるんだ!」という”決意”を歌うのだ。
根底にあるのは「人生の主役は自分だ」という意識で、だからこそ、置かれている環境を変えるには、自分自身が変わるしか無いという結論になっている。
なので、曲中で主人公が成長してるのがポイント。まるで映画みたいな物語性が歌詞にある。
これを18歳の男の子が歌ってヒットしてるのがイギリスという国で、やっぱスゲーなと思う…。





【No.20】
[asin:B009DP6B7E:detail]
今これを読んでる人のほとんどが「誰この人?」状態だと思うので、簡単に説明すると、Kurt Bakerはアメリカの白人男性である(簡単すぎ)。
もともとThe Leftoversっていう信頼できるパワーポップバンドをやってた人が、解散後にソロで活動を始めて、これが2作目。というか、解散してたのも、ソロになってたのも昨年まで知らなかった…。


音楽的にはバンド当時と変わらないコステロっぽい陽性メロディー全開のパワーポップ!完全に管理人の趣味でねじ込んでるけど、これは僕のブログなので文句は言わせない。文句があるなら、Twitterばっかやってないで、自分もブログをやりたまえ。
あれ?僕はなぜ読者に説教を始めてしまったんでしょうか?








The Leftoversも最高なんでチェックされたし。


という訳で、今回はここまで。
季節外れがシャレにならないレベルになってきたけど、次回でいよいよ完結となります。